口呼吸と歯並び
口呼吸の習慣が長く続くと歯並びに悪影響を与える可能性があります。
口を開いたままで呼吸をすると、舌が下に落ちやすくなります。すると、舌が歯を押してしまい、歯の並びが乱れたり、奥歯が浮き上がってしまうことがあります。また、口呼吸は気道を狭くする傾向があるため、いびきをかきやすくなることもあります。
口呼吸による歯並びの問題は早期に気づいて対策を取ることが大切です。
お子さんが口呼吸をしていたら、お早めにご相談ください。正しい呼吸習慣を身につけることで、口腔の健康を守り、美しい歯並びを維持することができます。
「口呼吸」チェック!
- 寝るときに口が開いている
- テレビやゲームをしていると口がポカンと開いてしまう
- 鼻が頻繁に詰まっている
- 姿勢が悪くなる
- 口内炎がよくできる
- 扁桃腺やアデノイドが腫れることがある
- 朝起きると喉が乾燥して不快感がある
- 唇が乾燥しやすい
- 寝るときにいびきや歯ぎしり、食いしばりをする
- 食事中にペチャクチャ音がする
- 口臭が気になる
上記に当てはまる場合は、口呼吸をしている可能性があります。
口呼吸と鼻呼吸の違い
口呼吸
口呼吸が続くと、口の中が乾燥しやすくなります。
それによって、唾液の分泌が減少してしまいます。唾液は口内のバクテリアを洗い流す重要な役割を果たしていますが、減少すると口の中が清潔に保てず、口臭やむし歯、歯周病のリスクが高まります。
さらに、口呼吸によって口や喉から直接空気を吸い込むため、異物やウイルスが体内に侵入しやすくなります。これによって、免疫機能が低下し、風邪や喘息、アトピー性皮膚炎などの疾患のリスクが増加します。口呼吸が健康に与える影響は深刻なため、できるだけ早めの対策が重要です。
鼻呼吸
鼻は、空気中のホコリやウイルスなどの異物を取り除くための重要な防御機構を持っています。
また、口を閉じて鼻から呼吸することで、唾液の分泌量が増え、口腔内の殺菌効果が高まります。
さらに、口呼吸と比較して多くの空気を取り込み、基礎代謝が上昇しデトックス効果があるとされています。この効果的なシステムは、鼻粘膜の繊毛と粘液によって浄化され、鼻水として外部に排出されます。
また、口腔から咽頭にかけての扁桃リンパ組織も異物をキャッチし、体外に排出する働きをします。鼻から吸い込んだ空気は、鼻腔組織や副鼻腔によって適切に温められ、湿度が調整された状態で肺に送り込まれます。
この加湿機能を備えた空気清浄機のような役割を果たす鼻呼吸は、身体を外部からの有害物質から守る最前線の役割を果たしています。
口呼吸が及ぼす悪影響
口呼吸が子どもの健康に及ぼすデメリットについてご紹介します。口呼吸が習慣化すると、歯並びやむし歯だけでなく、全身の健康にも影響を与えることがわかっています。
歯並びが悪くなる
口呼吸が習慣化すると、舌の位置が下顎の方に下がりがちになります。口が開いている状態が続くと、上顎が適切に成長せず、唇や頬の筋肉が弱くなる可能性があります。その結果、歯並びが乱れるリスクが高まります。特に、「出っ歯」や「叢生(そうせい)」といった症状が生じる可能性があります。
むし歯や歯周病になりやすくなる
口呼吸が続くと、自浄作用のある唾液が十分に役割を果たせなくなり、細菌が繁殖しやすい環境が作られます。これによって、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
さらに、口呼吸による歯並びの悪化は、歯の間に汚れがたまりやすくなるため、口臭の原因にもあります。
風邪やインフルエンザなど感染症にかかりやすくなる
鼻は、鼻呼吸時に空気のフィルターとしての役割を果たします。鼻粘膜や鼻毛は、空気中の微小な粒子や細菌、ウイルスなど有害な物質をキャッチし、体内に侵入するのを防いでいます。これにより、風邪やアレルギー反応などの症状を軽減し、健康を保つのに役立っています。
一方、口呼吸の場合は、鼻のフィルターを通さずに空気を直接吸い込むことになるため、鼻呼吸に比べて細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群・いびきの原因になることも
口呼吸が癖になっている子どもは、睡眠中も口を開いて呼吸することが多いです。この状態では、舌が本来の位置に収まらず、喉の奥に下がって気道が狭くなりやすくなります。その結果、睡眠中に何度も呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群や、いびき、呼吸障害が起こる可能性が高まります。
さらに、酸素供給が不十分になるため、正常な睡眠が取れず、夜尿症などの問題が生じる可能性があります。また、口呼吸が顔の成長にも影響を及ぼし、集中力や注意力の低下が起きることにもなりかねません。
口呼吸になる原因
口腔周りの筋肉が弱い
口腔周辺の筋肉の衰えは、口呼吸の原因の一つです。口周りには、口輪筋や舌筋などの重要な筋肉が存在します。これらの筋肉が弱くなる原因は、加齢による自然な衰えや、子どもの頃から口呼吸の習慣があることなどが挙げられます。
口輪筋は、口の開閉や唇の運動に関与しています。口輪筋が弱くなると口周りが緩んで口をきちんと閉じられなくなり、その結果口呼吸が生じることがあります。舌を適切な位置に保つためには、「舌筋」と呼ばれる筋肉が重要です。本来、舌は上あごに密着しているべきですが、舌筋の衰えによって舌が下がったり、歯の裏に当たることがあり、口が十分に閉じられなくなることがあります。
歯並びや顎の骨の発達に問題がある
口呼吸によって歯並びが悪くなるリスクが高まりますが、その逆で、元々の歯並びや顎の骨の発達に問題があることが原因で口呼吸を引き起こしているケースもあります。例えば、「出っ歯(上顎前突)」の場合、口をしっかり閉じるのが難しいため、結果的に口呼吸になりやすくなります。また、上顎の幅が狭くて舌を適切な位置に収めるスペースが不足している場合も、自然と口を開けてしまいがちです。
風邪やアレルギー性鼻炎による鼻づまり
風邪やアレルギー性鼻炎などが原因で鼻づまりが続き、一時的に口呼吸になってしまうことがあります。しかし、アレルギー性鼻炎が慢性化すると口呼吸が習慣化する可能性が高まります。そのため、鼻づまりの症状が見られるときは、まず耳鼻咽喉科に相談し、原因となる疾患を適切に治療することが重要です。
扁桃肥大
扁桃肥大とは、喉の奥にある「口蓋扁桃」(一般に扁桃腺と呼ばれるリンパ組織)が通常よりも大きくなった状態を指します。扁桃肥大の子どもは鼻から空気を吸い込みづらくなり、その結果、自然と口呼吸になりがちです。これにより、舌の位置や動きにも影響を及ぼすことがあります。
場合によっては、扁桃腺の摘出手術が行われることもありますが、一般的には10〜12歳ごろに扁桃肥大のピークを迎え、その後徐々に小さくなることが多いです。
姿勢や唇の力の弱さなども関係
口呼吸は、姿勢の悪さが原因となることもあります。例えば、「猫背」の状態では、肺への空気の通り道が狭くなり、浅く小刻みな口呼吸になりがちです。この状態を続けると、顎を突き出した前かがみの姿勢が習慣化してしまいます。
また、唇を閉じる力(口唇閉鎖力)が弱い場合も口呼吸になりやすいです。このような場合、乳児期にしっかり乳首をくわえることができなかったり、母乳やミルクをうまく吸えなかったり、離乳食期に唇をうまく使えなかったことが原因となることが多くあります。
口呼吸の改善方法
口呼吸の改善には、口腔筋機能療法(MFT)が有効です。
具体的には、舌先を特定の位置に保持しながら唾液を飲み込む練習など、段階的なメニューを通じて舌の位置を正すことを目指します。
当院では、マイオブレースというマウスピース型の口腔筋機能トレーナーと併用して口腔筋機能療法(MFT)を行います。